
エンターテイナー精神が、
まちとひとを盛り上げる。
純米ニトロ 高橋大輔さん

紫波町日詰。現在は決して人通りが多いと言えない日詰商店街ですが、
2019年7月に新たなお店がオープンしました。
その名は「純米ニトロ」
種類豊富な日本酒と県産食材を使った料理を楽しめる居酒屋です。
このお店を一人で切り盛りする、紫波町出身の高橋大輔さんに、
なぜお店を始めたのか?なぜ紫波町なのか? お話を伺いました。

料理人になるなら、自分の店を持ちたい。
店を出すなら、地元の紫波町しかない。
盛岡の調理師専門学校を卒業後、ずっと料理人として働いている高橋さん。専門学校在学中から、いつかは自分の店を持ちたいという思いがあった。
卒業後に調理師として就職したホテルで料理のスキルを上げた後は、盛岡のダイニングバーで働いた。「接客から経営まで、独立にあたり必要なことは、全てそこで学んだ。」と言う。その後、イタリアに渡って現地のレストランで働いたり、帰国後にはイタリア料理店や和食居酒屋で働いたりしつつ、累計10年ほどそのダイニングバーで開業に向け経験を積み、資金を貯めた。
「自分のお店を開くなら、地元の紫波町で、
それも日詰商店街でという気持ちは初めから揺らがなかった」。
高橋さんは、はっきりとそう言う。
これまでも地元から離れるタイミングはあった。東京の専門学校へ進むこともできたし、イタリアに住み続けて働く道も考えた。
しかし結局岩手を選んだ。
「子供の頃、日詰商店街はもっと活気があって、お祭りとかも楽しかった記憶がある。
今は静かになってしまったけど、だからこそ自分が盛り上げていきたい」。
楽しかった思い出が、紫波町への愛着を強くしたようだ。

全員を楽しませたい
L字カウンターとテーブルが一つ。
10人余りで席が埋まる小規模なお店には、連日紫波町内外からお客さんが集まり、
町内一の品揃えを誇る種類豊富な日本酒と、四季に合わせた料理、
そしてその食材にまつわるストーリーを楽しんでいる。
「扱う日本酒は全て蔵まで見てきた。野菜は町内の知り合いの農家さんから仕入れるものが多いし、冬の今が旬のイノシシは鳥取の知り合いが罠で仕掛けて獲ったもの。作り手さんの思いや季節感も、この店なら伝えられる」。
この規模の理由は、全員のお客さんに楽しんでもらいたいから。
手書きで並ぶメニューの内容も、お客さんのリクエストを大事にしている。
「100人を相手にしたら無理でも、10人なら楽しませられる。
呑んで食べて楽しんで帰ってもらえたら。」

人脈、経営、自律
お店をやっていくにあたり大切なことを挙げてもらった。
「料理の技術は大前提として、人脈はやっぱり大事」。
人脈のおかげで、良い食材を仕入れることができていたり、お世話になった方が食べに来てくれたりしているそう。
経営に関しては、
最初はやりたいことをやるのが楽しくて、原価を考えていなかった時があったと言うが、
今はやりたいことと経営面のバランスを考えるようにしているそうだ。
それから自律。
「仕込みは明日にしようかな〜と思うこともある。けど、いや、今日やろう!と」。
一人で切り盛りしている店。
仕事をするもしないも自分次第だからこそ、自分に甘えないようにすることが大事なのだと言う。

紫波町で楽しむ若者が増えてほしい
将来的には、もっと事業を拡大したい、と言う。
「自分の店がもっと良くなれば、商店街や紫波町ももっと良くなるはず。
商店街に店舗を増やして、活気付けたい」。
高橋さんがお店にかける思いは、紫波町を盛り上げたいという思いにつながっている。
小さな店の貴重な一角に置かれたターンテーブルは、なんとなく紫波町に似つかわしくない。
それにも高橋さんの狙いがある。
「若者に食い付いてきてほしいから」。
盛岡まで出掛けなくても、紫波町で楽しめるって思ってほしい、と。
高橋さんが店を始めたことにより、それに続く人たちがいるはず、と期待もしている。
「これから紫波町で何かやりたい人という人の先駆けになれれば」。

取材中、一貫して「盛り上げたい」「楽しませたい」と仰っていた高橋さん。ゆったり落ち着いた話しぶりではあるものの、根本にあるエンターテイナー精神がこれまでの人脈を作り、この先もきっと人と人とを繋いでいくのだろうと感じました。
小さな輪から、大きな輪へ。
「商店街を活気溢れる場所に戻したい」___お店の開業は、はじめの一歩です。
