しわインタビュー

箪笥工房はこや 木戸良平さん

日本でも珍しい船箪笥職人。
箪笥だけでなく、くらしも手作り

箪笥工房はこや 木戸良平さん

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柳宗悦も唸らせた、日本の職人技の集大成

みなさんは「船箪笥」ってご存知ですか?
電話もインターネットもない江戸時代に、貿易商にとって一番重要だったのは、各地の産品の情報でした。
貨幣、帳簿、船鑑札などの貴重品と一緒に大事に収納するための金庫兼書類入れとして、北前船用に作られた携帯できる小さめの箪笥を船箪笥といいます。

遭難して船から投げ出されても浮いて回収できるようになっており、万が一他の人に拾われてしまったとしても、精巧なからくりによって、簡単には開けられないようになっています。

北前船交易の隆盛とともに競い合うように豪華なものが作られるようになり、民芸運動の先駆者・柳宗悦が「用の美」の傑作として絶賛したこともあって、今では価値ある骨董品としても根強い人気があります。

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すごい人、紫波にいました

木戸良平さんは、あたらしく船箪笥を作る仕事をしていますが、高度な技術が必要な船箪笥職人は今の日本ではとても少なく、なかでも漆塗りから金具まで全てのパーツを手作りしている職人は木戸さん一人かもしれません。
そんな稀有な職人さんが、紫波には住んでいるのです。

船箪笥は部品や工程が多く、年に4つくらいしか作れません。長いものは1年かかるものも。
特に木戸さんは既製品を一切使わず、金具も作っているので、なおさらです。木目の美しさが最大限引き出されるように金具も配置するそうです。

確かにこの重厚で気高く、職人技が漂う雰囲気は、あきらかに只者ではありません。
5種類の鍵を使い、8種類のからくりがある船箪笥を見せていただきました。板だけで300枚も使っています。

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船箪笥の魅力

もともとは骨董商の依頼で古い岩谷堂箪笥、仙台箪笥などの修理の仕事をしていたところ時代箪笥の魅力にはまり、やがて船箪笥の再現を志すようになりました。
時代箪笥は各地にそれぞれの特色がありますが、その中で船箪笥は信仰心の表れでもある仏教建築の影響を受けた抽象的なデザインも魅力で、美術的、技術的に最高峰とも言えます。

カラクリも非常に凝っているところが、魅力だそうです。

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工房は木の匂い

ゆめもあちこち探検します。
吊り下げられている木の板は、均等に乾くようにして木の癖をとっているそうです。
材料になる木材には実に様々な種類があって、地中に埋まっていた珍しいジンダイ(神代)や、樹木の瘤のようなところをスライスすると現れる、同心円形の模様が連なる玉杢など、貴重な材料が並んでいます。

ここはもともときのこ栽培をしていた工場だったそうですが、手に入れてからセルフリノベをして、1年1室づつ改装してきたそうです。
住む場所も手作りしているんですね。

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民俗舞踊が繋いでくれた岩手との縁

水戸出身の木戸さんは、大学時代に岩手の民俗芸能と出会い、その芸能とそれを担う人々に魅了されたのが、岩手に移住するきっかけでした。

その後4年間新聞記者として働きますが、消費社会の行き詰まりを感じ、手仕事に触れる機会も多かったことから、この世界に飛び込みました。
紫波に来たのは平成2年。当時はテーブルや椅子などのオーダー家具も作っていたので、広いこの作業場があるのを気に入って引っ越してきました。

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落ち着いた田舎暮らしができるのがいい

紫波町の好きなところは、独特の雰囲気のある、どん詰まりの山屋峠地区。ミズバショウの群生地に地域のみんなで木道をつくるなど、共助の習慣や昔ながらの生活技術がまだ残っている点が魅力的で、落ち着いて田舎暮らしができる様子がとてもいいそうです。

木戸さんはお仕事はもちろん、工房も家も食べ物も、すべて手作りの暮らしをしています。

現在住んでいるお家の前には、かつて駄菓子や塩、たばこなど売る茶屋だった空き家を譲り受け、DIYをしながらゲストハウスをオープン。今度は裏手の小屋も改装し、お料理や手仕事ができるスペースにするなど里山暮らしを体験できる場所にしていきたいと思っているそうです。
周辺の環境も、お家も本当に素敵な場所だったので、これからの活動もとっても楽しみですね。

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箪笥工房はこや 宿はこや

箪笥工房はこや
岩手県紫波郡紫波町山屋字外村 262
宿はこや
岩手県紫波郡紫波町山屋字外村 259-1

TEL 019-672-5161 090-6492-5161

http://hakoya.iwate-tohoku.jp/

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